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行政書士と刑法基礎56(業務妨害罪)

  • ezily5
  • 2022年11月12日
  • 読了時間: 5分

行政書士と刑法の基礎(業務妨害罪) 務妨害罪の保護法益は、業務活動です。業務の妨害を罰しているので当たり前といえば当たり前ですね。

業務とは職業その他の社会生活上の地位に基づいて継続して従事する事務」のことをいう。 業務妨害罪の要件ですが ①偽計・威力 偽計は、欺罔や錯誤、不知を利用することをいいます。簡単にいえば「だます」こと。威力は、人の意思を抑制するに足る勢力のことを言います。暴行や脅迫よりも緩い。 ②業務 職業その他の社会生活上の地位に基づいて継続して従事する事務」のことです。社会生活上である必要があるので、個人的な趣味の活動は業務に含まれない。 ③妨害行為 偽計や威力が業務を妨害するようなものであれば偽計業務妨害罪、威力業務妨害罪は成立します。ここで注意してほしいのは「業務妨害の結果」までは必要ないということです。行為がありさえすればよい。 ④故意 次に公務執行妨害罪(刑法95条1項)の要件であるが ①公務員 ②職務執行 妨害が行われた際の公務員が職務に従事していたかは時間帯や場所と職務行為との関連性、一体性を見る。 判例では、管理的職務は職務執行の範囲を広く考える傾向にあります。たとえば県議会議長は議会を管理する職務にあります。その場合は、休憩中に行われた妨害行為に対しても公務執行妨害罪が成立するとしたものがある。

③職務適法性 職務適法性は実は刑事訴訟法でつながりがある要件です。刑事訴訟法では捜査の適法性といった論点がありました。あれはほぼすべてこの公務執行妨害罪が成立するかどうかについて争われたものなのです。捜査などが適法に行われたといえなければ、この③職務適法性の要件を満たさないため、公務執行妨害罪(刑法95条1項)は成立しません。

では職務の適法性はどう判断するのか?一般的には ㋐抽象的職務権限にあるか→㋑具体的職務権限にあるか→㋒手続の重要部分を履践しているかによって判断します。

具体例を考えてみましょう。警察官が令状を示して逮捕しようとした場面を考えてください。

逮捕 この場合の③職務適法性要件の検討に入ります。 まず㋐抽象的権限かどうかを考えます。警察官にとって逮捕は法令によって認められている権限ですので抽象的権限に当たります。

次に㋑具体的権限かどうかを考えます。これは法律上の要件を具備していることを言います。令状が出てくるかどうかなどを考えます。

最後に㋒重要部分を履践しているかどうかを考えます。抽象的権限があり具体的権限があったとしてもそれを適法に行っていなければ意味がないからです。令状をちゃんと被疑者に示したかどうかなどを考えます。

ちなみに、刑事訴訟法で問題になるのは㋒重要部分の履践です。詳しくは刑事訴訟法の論点に解説を映しますが、社会一般的相当性などを考えることになります。

④暴行・強迫 暴行・強迫は間接的なものでよい、という点を押さえてください。別に公務員に直接向けられたものでなくてもよいということです。

通常の暴行は不法な有形力の行使なので直接その者に加えないと認められませんが、公務執行妨害罪の暴行は特別に間接的なものでよいというわけです。

たとえば証拠物差押え中に注射器を踏みつけて破壊する行為や警察官のそばにあるパトカーに対して石を投げてフロントガラスを割るような行為があたります。

これらは警察官に向けられたものではありませんが、公務執行妨害罪となります。

業務妨害罪と公務執行妨害罪の使い分け 業務に強制力を行使する権力的公務は入らない 業務と公務については様々な議論がありますが、それぞれの学説を見ていってもあまり実益はありません。

判例・通説に絞って解説していきます。

まず基本的に公務は業務に含まれるが「強制力を行使する権力的公務」は業務に含まれないという点を理解してください。

強制力を行使する権力的公務かどうかは「公務員の公務内容」を見ます。たとえば捜査中の警察官であれば「強制力を行使する権力的公務」にあたります。

なぜ強制力を行使する権力的公務は、業務妨害罪の「業務」要件を満たさないのでしょうか。

これは強制力を行使する権力的公務であれば実力で威力を排除できると考えられているからです。業務妨害罪は威力で苦しむ者を助ける規定なので、実力で威力を排除できる公務には威力妨害罪は成立しないことになります。

学説によりさまざまですが、偽計の場合にはあまり強制力を行使する権力的公務という区別を使っていないと思われる判例もあります。偽計は「こっそり行われる妨害行為」でした。そのため、排除する実力があるかどうかはあまり意味を持たないからですね。この点は詳しくは基本書等で確認して自分自身の見解をもっておくことをおすすめします。

公務であれば公務執行妨害罪は考えられる 一方、公務執行妨害罪の公務にはそのような限定はありません。強制力を行使する権力的公務かどうかにかかわらず、公務執行妨害罪は成立します。

もちろん、他の要件は検討する必要がありますので注意してください。

業務妨害罪と公務執行妨害罪は観念的競合(刑法54条1項前段) 強制力を行使する権力的公務でない場合には、業務妨害罪と公務執行妨害罪の両方が成立することが多々あります。

この場合は観念的競合(刑法54条1項前段)として処理するのが一般的です。業務妨害罪と公務執行妨害罪は保護法益が業務と公務で異なるのでまとめて「包括的一罪」とすることはできず、一つの行為であれば観念的競合となるわけです。

また、公務執行妨害罪より傷害の結果が発生した場合、公務執行妨害罪と傷害罪は観念的競合となります。一つの行為で保護法益が異なるので当たり前ですね。

〈公務でない場合〉 偽計業務妨害罪(刑法223条)や威力妨害罪(刑法224条)が成立する。

※偽計の場合には強制力を行使する権力的公務であっても、実力で排除できないので公務執行妨害罪(刑法95条1項)と偽計業務妨害罪(刑法223条2項)の観念的競合(刑法54条1項前段)となるという見解が有力

 
 
 

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