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小説 田舎行政書士 最終回

  • ezily5
  • 2019年12月26日
  • 読了時間: 2分

小説 田舎行政書士 離婚業務最終回

予定時間より、1時間早く、公証役場に到着。

公証役場に入ると、公証人は機嫌が悪そうだった。

前回は公証書案を見せてくれたが、今回はなし。公正証書案を手直しさせたのが原因らしい。

江尻が公証人に挨拶すると、公証人も不愛想にお辞儀した。

事務員が別な人になっていた。何かあったのだろうか。江尻は、関係書類を事務員に手渡すと、応対カウンターの近くにあるソファーに腰を降ろし、ガラステーブルの上に置いてあるパンフレットを読み始めた。

予定時間の10分前になって、ドアをノックする音がした。どうやら、依頼者が来たらしい。江尻がドアを開けると、素晴らしい美人が2人立っていた。

「どうぞ。」江尻は丁寧な仕草で2人を部屋に招き入れた。

「江尻先生お世話になりました。」まず、最初に依頼人が頭を下げた。 「この前は白ワインご馳走さまでした。」依頼人の娘と思われる美人が頭を下げた。

「白ワイン?」江尻は美人を見た。この前のクルージングで相席した美人だった。

「母親が一緒に。」と言うものですから。美人は再び江尻に頭を下げた。

「そうですか。娘さんでしたか。」江尻はあまりのことに、驚いた表情をした。

しばらくして、夫がやって来た。ロマンスグレーの長身のハンサムな男だった。

「この度は、大変お世話になりました。」ロマンスグレーの夫は開口一番、江尻に言った。

「こちらにどうぞ。」公証人が2人を面談テーブルに招いた。

ここで、ひと悶着が起こった。

「娘を同席させたいんですが、駄目ですか。」依頼人は不安げに言った。

「同席は許されません。」公証人はきっぱりと言った。依頼人は諦めて面談テーブルの椅子に座った。

「実は、江尻先生と離婚交渉のメールやりとりをしていたのは、母親ではなくて、私なんです。」母親以上の美人の娘はバツの悪そうな顔をして江尻に頭を下げた。

「そうですか。女性官僚のあなたが・・・」江尻は驚いた顔をして美人の娘の顔を見た。

ひと悶着の原因は、母親が娘に離婚交渉をまかせていたからだった。

「母親は、江尻先生との離婚交渉を私に任せていたんです。だから・・・」娘は面談テーブルにいる母親に心配そうに目をやった。

とにかく、公正証書を公証人が読み上げ、依頼人と夫が実印を押すという儀式は無事に終了した。離婚成立である。 事務員が江尻に親指を立てて見せた。

「支払いのほうはどうしますか?」依頼人が帰り際に言った。

「そのうち、請求書だしますから。」江尻は咄嗟に言った。

「俺は、白ワインの美人と交渉していたわけか。」思わず、江尻の心の中に笑いが込み上がった。(完)

 
 
 

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